地震・室内安全2026.08.31
防災の日が近づくと、ホームセンターの転倒防止グッズの棚がにぎわいます。ただ、器具を買って付ければ終わり、というものではありません。先に寝室や避難経路から家具を減らし、壁の下地と家具の強度を確かめ、そのうえで合う器具を正しく取り付ける。この順番が大事です。東京都も2026年の防災週間に合わせて、器具の効果を過信せず、配置の工夫と複数の対策を組み合わせるよう呼びかけています。以下では、家具・家電を部屋ごとに点検し、下地補強や造り付け収納まで含めて計画する手順を説明します。
東京都生活文化局の2026年度の注意喚起「あなたの家の家具の転倒対策は大丈夫ですか!?」は、9月1日の防災の日と8月30日〜9月5日の防災週間に合わせて、家具転倒防止器具の組み合わせ、家具の配置、据え付け収納の活用を案内しています。棚を押さえようとしてけがをした例や、食器棚の扉が開いて中身ごと倒れた例も紹介されています。
東京消防庁の「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」(令和6年1月)は、近年の地震でけがをした人の約30〜50%が家具類の転倒・落下・移動によるものだったと整理しています。家具が引き起こすのはけがだけではありません。電気ストーブなどに倒れかかって火災になる、出入口をふさいで避難できなくなる、という被害も起きます。
| 危険 | 室内で起こること | 最初に確認する場所 |
|---|---|---|
| けが | 家具・家電・収納物が倒れる、落ちる | 寝室、子ども部屋、長く座る場所 |
| 火災 | 家具が暖房器具へ倒れる、コードを傷める | キッチン、暖房器具、コンセント周辺 |
| 避難障害 | 家具・引き出し・収納物が通路をふさぐ | 玄関、廊下、部屋の出入口 |
建物そのものの耐震性と、室内の安全は別の対策です。旧耐震住宅など建物の強さが気になるなら、耐震診断と耐震リフォームも並行して確認してください。

固定器具を選ぶ前に、家具が倒れる範囲と収納物が散らばる範囲を平面図に描き込んでみてください。寝ている人や座っている人に直撃しないか、ドアが開かなくならないか、玄関まで歩けるか。それが分かれば、背の高い家具を寝室から出す、低い家具に替える、納戸やクローゼットにまとめて収納する、といった配置の工夫だけでも危険はかなり減ります。
内閣府の「自然災害への備えは万全ですか?チェックしてみよう!」も、耐震診断・耐震補強と並べて、家具の固定と配置の工夫を有効な備えとして挙げています。配置を整えてから固定する。この順番なら、器具だけに安全を預けずに済みます。

東京消防庁のハンドブック「家庭用家具の転倒・落下・移動防止対策」は、ネジで固定する相手を壁下地の柱・間柱・胴縁などとしています。表面が石こうボードなら、下地探知器や図面、打診で内部の位置を確かめ、家具の金具が届く場所に固定しなければなりません。
固定したい位置に下地がなければ、壁を一部開けて構造用合板や補強板を入れる、下地に渡した固定用の長押を設ける、家具側に当て板を付ける、といった方法を比べます。壁の中には電線・ガス管・給排水管が通っている可能性があります。位置が分からないまま長いネジを打つのは危険です。
| 壁の状態 | 確認方法 | 検討する納まり |
|---|---|---|
| 柱・間柱が合う | 図面、下地探知、現地確認 | 適合する金具を下地へネジ固定 |
| 固定位置に下地がない | 壁内と配線・配管を調査 | 補強板、構造用合板、固定用長押 |
| 付け鴨居がある | 構造材か化粧材か、固定強度を確認 | 強度確認後にベルト等で固定 |
| コンクリート壁 | 管理規約、躯体・設備位置を確認 | 管理者承認と適合アンカーを確認 |
東京消防庁のハンドブック「地震に対する家具類への対策」は、L型金具などで壁に直接ネジ固定する方法を最も効果が高いとしています。家具と壁面と器具に十分な強度があることが前提です。ポール式を使うなら天井の強度を確認し、ストッパー式や粘着マット式と併用して効果を上げます。
| 器具・方法 | 向いている対象 | 確認すること |
|---|---|---|
| L型金具・プレート式 | 背の高い家具 | 壁下地、家具天板、ネジ長さ、取付方向 |
| ベルト・ワイヤー式 | 家具・家電 | 製品指定部、壁強度、たるみ |
| ポール式+ストッパー式 | 壁へネジ固定しにくい家具 | 天井・家具の強度、設置位置、併用 |
| 連結金具 | 上下二段の家具 | 上下の強度、連結位置、壁固定 |
| 扉・収容物落下防止 | 食器棚・開放棚 | ラッチ、ガラス、棚板、日常の操作 |
粘着マットやストッパー式は、単独だと大きな家具にはあまり効かないことがあります。ポール式も、天井や家具の端ではなく説明書が示す位置に付けないと意味がありません。器具の性能表示だけでなく、家具の高さ・奥行き・重さ、床の滑りやすさ、壁とのすき間を現地で確かめてください。

食器棚は、本体の転倒、扉の開放、引き出しの飛び出し、食器とガラスの落下を分けて対策します。扉ラッチ、棚板からの落下防止、ガラスの飛散防止、上下二段の連結、本体の壁固定を組み合わせます。重い食器や調理家電は低い位置へ移してください。
冷蔵庫は、製品の背面などに指定された固定部を使い、壁下地に合うベルトや金具で固定します。放熱に必要なすき間、電源コード、給水接続、搬出経路はふさがないように。テレビは本体とテレビ台を連結し、台そのものの移動や転倒も抑えます。どれも取扱説明書とメーカーの公式情報が優先で、製品に勝手に穴を開けてはいけません。
暖房器具、コンロ、分電盤、避難口の近くでは、家具が倒れたあとどこに来るかまで想定します。地震後の電気火災については、感震ブレーカーの後付けと復電時の注意点も確認してください。

長周期地震動では、高層階の家具が倒れずに大きく動くことがあります。東京消防庁の調査では、東日本大震災のときに都内で家具類の転倒・落下・移動が起きた割合は1・2階で16.8%、11階以上で47.2%でした。当時のアンケート調査なので、すべての建物に同じ割合が当てはまるわけではありませんが、高層階では移動対策を足す必要があることを示しています。
マンションでは、コンクリート躯体や戸境壁が共用部分に当たる場合があります。ネジやアンカーを使う工事は、マンションリフォームの管理組合申請を先に確認してください。
壁紙の張り替えや間取り変更をするなら、壁を閉じる前に家具の位置と固定の高さを決めておくのが一番の近道です。必要な範囲に構造用合板や補強板を入れ、施工写真と寸法図を残しておけば、将来家具を替えるときにも固定位置が分かります。付け長押を壁面に連続させておくと、複数の家具の固定位置を調整しやすくなります。
国土交通省の令和6年度「長期優良住宅化リフォーム推進事業|防災性、レジリエンス性の向上改修工事」でも、家具固定用の長押の設置や構造用合板などの下地補強が、家具転倒防止の改修例として示されていました。ただしこれは過年度事業の工事例で、2026年度の補助対象を示すものではありません。補助制度を使うなら、契約前に当年度の公式要件を確かめてください。
収納量を保ちながら家具を減らすには、納戸・クローゼットへの集中収納か、壁下地にしっかり固定した造り付け収納を比べます。造り付けにしても、扉や棚板、収納物の落下対策は別に必要です。収納計画についてはクローゼット・造作収納のリフォームも参考にしてください。
引き渡しのときは、金具のがたつき、ネジの浮き、家具と壁のすき間、扉ラッチ、キャスターロック、避難経路を家族と一緒に確認します。固定したあとに家具を勝手に動かすと器具が働かなくなるので、移設するときは固定方法も見直してください。完成検査の進め方はリフォームの完成検査チェックリストにまとめています。
東京消防庁は、家具をL型金具などで壁に直接ネジ固定する方法が最も効果が高いとしています。ポール式を使うなら天井の強度を確認し、ストッパー式や粘着マット式との組み合わせを検討してください。
石こうボードの表面だけで判断せず、柱・間柱・胴縁・構造用合板など、ネジが効く下地を確認します。適切な位置に下地がなければ、壁を開けて補強板を入れる方法や、固定用の長押を設ける方法を比べます。
まず管理会社や所有者に、ネジ固定の可否と原状回復の条件を確認します。穴を開けられない場合は、配置の変更、背の低い家具への交換、ポール式とストッパー式の併用などを検討しますが、条件によって効果が違うので過信しないことが大切です。
地震では家具だけでなく家電も倒れたり落ちたり動いたりします。製品の取扱説明書で指定された固定部と器具を確認し、壁下地、放熱の空間、配線、日常の掃除や移動を妨げない方法で固定します。
高層階では長周期地震動で、家具が倒れるだけでなく大きく動く可能性があります。壁固定に加えて、キャスターのロック、着脱式ベルト、窓際に重い物を置かない配置、玄関までの避難経路をふさがない計画を確認しておいてください。
固定したい位置に下地がない、家具が重い、壁の中の配線や配管が分からない、造り付け収納に変えたい。こうした場合は相談したほうが安全です。内装工事の予定があるなら、壁を仕上げる前に固定位置と下地補強を決めておくとうまく納まります。
今夜寝る前に、枕元に倒れてくる家具がないかだけ確かめてください。家具転倒防止は、寝室・長く過ごす場所・避難経路から配置を見直すのが先で、固定方法を選ぶのはそのあとです。壁に直接ネジ固定できないなら、天井側や床側の器具を組み合わせつつ、効果を過信しない。食器棚、冷蔵庫、テレビ、キャスター家具は別々に確認し、高層マンションでは移動防止も加えます。内装工事をするなら、壁を閉じる前に補強板や固定用長押、造り付け収納を計画し、下地の写真と寸法を残しておいてください。
リフォームプラザでは、家具固定用の壁下地補強・造り付け収納を含む住まいの地震対策について、地域の内装リフォームやフルリフォームに対応する会社へまとめて相談できます。